2004 年のなんでもセミナー


12/9 タイトル:可解群に対する Hall の定理

発表者:近藤 宏樹 氏

内容: 前回の続きです。 論理的には 1 回で完結してしまいましたが、 前回紹介した Schur-Zassenhaus の定理の証明を完結した後、 有限可解群の特徴付けを紹介します。


12/2 タイトル:可解群に対する Hall の定理

発表者:近藤 宏樹 氏

内容: 有限群論における最も基本的かつ美しい結果の一つとして、

「有限群 G の位数 g が g=pn×a(p は素数、a は p と互いに素)と書けるならば、 G は位数が pn の部分群を持つ」

という Sylow の定理がよく知られています。

この定理の拡張として、次のような問が考えられます。

「g=mn(m と n は互いに素)と書けるとき、G は位数 m の部分群を持つと言えるか?」

残念なことに、これは一般的には真ではないのですが、 G に可解群という条件を課すと成り立つことが証明できます。 これが今回のセミナーでお話しする Hall の定理です。 Hall の定理は、この定理の他にも種々の応用を持ち(発表者は他の応用を知りませんが)、 有限群論の基礎の最も重要な定理とも言われる Schur-Zassenhaus の定理を用いて示されます。

一回でお話しするには少しだけ多いので、セミナーは二回に分ける予定です。 大まかな流れとしては、

一回目:

0. 序論

1. 群の作用

2. 補群

3. Hall の定理

二回目:

4. Schur-Zassenhaus の定理の証明

5. 可解群の特徴付け

となります。 一回目では Schur-Zassenhaus の定理を認めて Hall の定理を証明し、 二回目には Schur-Zassenhaus の定理の証明を完結させるとともに、 ある意味で Hall の定理の逆とも言える有限可解群の特徴付けを紹介します。

予備知識は、「群論の初歩」とします。 具体的には、Sylow の定理を事実として認めていただくとすると、 準同型定理を知っていれば 5. を除いては問題ありません。 特に、可解群については定義からセミナーで行う予定です。 前回のセミナーを聞いていただいた方には繰り返しになる部分もありますので、 知っている方はその間寝ていてくださると助かります。 5. ではおそらく知っている方が多いある定理を一つだけ事実として仮定します。

上に書いたように二回に分けるとだいぶ余裕ができますので、 証明が隅々まで埋まるようなセミナーにするのが目標です。 議論が追えなくなるためには、 飽きてしまって途中で部屋を出ていってしまうことが必要条件となるような セミナーになると思います。 ぜひ気軽に聞きに来てください。


11/25 タイトル:射影加群とその周辺

発表者:三枝 洋一 氏

内容: 環 A 上の加群 P は,Hom_A(P,-) が完全関手になるとき射影加群と呼ばれますが,このセミナーの目標は 体 k 上の n 変数多項式環 k[X1,...,Xn] 上の射影加群がすべて自由加群であることを 証明することです.

一般に環 A 上の有限生成射影加群は Spec A 上の(階数有限な)局所自由加群層と対応するため,(階数有限の) ベクトルバンドルの代数的類似であると考えることができます. Spec k[X1,...,Xn] はアフィン空間 An であり, 古典的位相で可縮なので,その上の「ベクトルバンドル」はすべて自明になることが期待され, 「k[X1,...,Xn]上の有限生成射影加群は自由である」 という予想は自然なものであることが分かります. 歴史的には,これは有名な FAC のなかで Serre によって予想され,1976年に Quillen と Suslin によって 独立に証明されました.

一方,環 A 上の有限生成でない射影加群に関しては,次の著しい結果があります:

A が Noether 環であり,Spec A が連結である(すなわち,A が自明でない羃等元をもたない)ならば, A 上の有限生成でない任意の射影加群は自由である. これは 1962 年に Bass によって証明されたものであり,有名な Kaplansky の結果「局所環上の任意の射影加群は 自由である」を(本質的に)含んでいます.

セミナーでは,上記の2つに初等的かつ詳細な証明をつけたいと思います.

詳しい予定は以下の通りです:

Introduction:とくにありません.

第 1 部:Serre 予想

Quillen による証明を紹介します.これは,Quillen の patching theorem と Horrocks の定理 を用いて帰納法により 証明するというものです.

0. 証明の方針,各定理のステートメント

1. 帰納法の進行部分

2. Horrocks の定理

3. Quillen の patching theorem

第 2 部:Bass の定理

超限帰納法を使います.そういうのが好きな人は楽しみにしていてください.

1. Kaplansky の定理(すべての射影加群は可算生成加群の直和で書ける)

2. Bass の定理

予備知識:

基本的な環論を知っていれば十分だと思います.具体的には,

・射影加群の定義と基本的な性質

・環の分数化とそれに伴うイデアルの対応

などが挙げられます.まだ準備がすべて終わったわけではないので,使う知識を指定することはできませんが, 当日18:00までに K 会に来ていただければ,補足説明を行いたいと思います.

なお,スキーム論については一切仮定しません.そのため,いくつかの定理のステートメントや証明が冗長または 複雑になることがありますが,その場合は適宜「プロ向け注」 (というほど大袈裟なものではなく,代数専攻の院生向け注) を補足したいと思います.

注意

・セミナーでは,A が単位的可換環である場合のみを扱います.非可換である場合について質問されてもお答え することはできません.あらかじめお詫びしておきます.

・発表者は環論が専門ではないので,(例えば Bass-Quillen 予想の最近の進展など)専門的な質問には 一切お答えすることができません.あらかじめお詫びしておきます.

・当セミナーは 2001 年 4 月 26 日に斎藤君によって行われた 「射影集合とその周辺」とは全く関係ありません. あらかじめご諒承ください.


11/18 タイトル:カタラン予想の証明の残り

発表者:尾高 悠志 氏

内容: pがmod.qでみて1でない場合(case2) の証明です。前回のと合わせて証明が 完成することになります。 予備知識はStickelbergerの定理のstatementくらいです。 今度は単数群とそのann(*)に注目することになります。 準備としてある特殊な環のイデアルの構造を考えます。


おそらく今週は「pがmod.qで1でない場合の証明」です。それで一応 証明はホボ終わりです。

予備知識:

Stickelbergerの定理の証明を先々週やりましたが、それを証明抜きで認 めてくだされば「ガロア群・円分体・素イデアル」くらいだと思います。

statement of Stieckelberger's theorem:

MをQ上アーベル拡大体とする。ガロア群環のStickerberger ideal(stickelberger elementの張るイデアル)は任意のMのイデアルに作用すると単項イデアルと成る。

11/11 タイトル:カタラン予想の証明の続き

発表者:尾高 悠志 氏

内容: おそらく今週は「pがmod.qで1である場合の証明」です。来週に残り をやって完結しようと思っています。(次週の方、すいません)

予備知識:

Stickelbergerの定理の証明を先週やりましたが、それを証明抜きで認め てくだされば「ガロア群・円分体・素イデアル」くらいだと思います。

statement of Stieckelberger's theorem:

MをQ上アーベル拡大体とする。ガロア群環のStickerberger ideal(stickelberger elementの張るイデアル)は任意のMのイデアルに作用すると単項イデアルと成る。

11/4 タイトル:ある整数論の未解決問題の解

発表者:尾高 悠志 氏

内容: 1844年、あるベルギーの数学者が次のような簡潔な予想を打ち出した。

となりあう累乗数は8と9のみである。

ここで、累乗数とは2以上の自然数a,bを用いてabと表されるものである。この問題 は、より有名なフェルマー予想と同じように、長年、大数学者達の挑戦をはねのけて きた。 まず、第1の進展といえるのは「累乗数の肩の少なくとも一方が偶数である場合」を Lebesgueらが解決したことである。同様に肩が3の倍数であるものなども解決してい く。 結局、breakthroughといえるだろう進展は、超越数論の発展によった。解のexplicit な有限性などがTijmanらの功績でわかった。 そして、2002年4月18日、RussiaのPreda Mihailscuなる数学者が個人的な論文という 形で、終止符を打った。 名は"Primary units and a proof of Catalan's conjecture" 結論から言うと、代数的整数論を用いる。(それは、この問題を解こうとちょっとい じくると円分体がすぐ出てくるから当たり前でもあるが) 今回はその「最終解決」を、皆さんに省略すること無く披露したい! 予備知識としては、「円分体、素イデアル」が分かれば十分だろうし、CM体、 Stickelberger-ideal、岩沢理論のかけら(シカ分かんない)なんかは「準備」とし て軽く説明してからやるつもりだが、そこはちょっと証明などは端折るかもしれない。


より詳しい発表の流れ: 2回(今回と次回)を合わせて以下の通り

0.歴史−誕生時からの進展史−

1.準備

2.方針

3.p=2や、q=2の場合

4.pがmod.qで1、またはqがmod.pで1の場合

5.3.4.以外の場合

6.?

これがあれば完全に十分という予備知識は、

○ 代数的整数論のホンの初歩(円分体の分岐素イデアル、正規付値、局所次数、積公式)

○ ちょっとした古典的類体論(絶対類体、種の体)???円分体の種の体を求める

これは、あくまで「無理に予備知識を挙げるとなれば」です。定義を述べると数秒で 終わるようなもんばっかです(笑)。

仮定する事実は、

○ 積公式

○ 絶対類体の存在

○ Galois群環での、Stickelberger-idealに対するIwasawa-class number formula …Remark:よく知られた、岩澤の1959年の結果ではありません。

○ Cassels-relation

さらに、p=2,q=2の場合の、古い論文が手に入らないんで(というか論文の探し方を 全く知らない)このままでは3が消滅します。この3.とCassels-relationは、とも に初等的に解けるような形をしているので、今から考えようと思っていますから、 もっしかしたら「仮定する事実の集合」(以下、Xとおく)からどれかは取り除かれ るかもしれませんが、望みは薄いか。ちょっとXの位数がでかすぎる気がします。 (始めの2つは仕方ないとして)

文献その他:

1.Biluの解説記事2つのありか(これが主です)

Yu.F. Bilu, Catalan's conjecture (after Mihailescu)
http://www.math.u-bordeaux.fr/~yuri/

2.Metsankylaの解説記事

Tauno Metsankyla, Catalan's Conjecture: Another old Diophantine problem solved
http://www.ams.org/bull/2004-41-01/S0273-0979-03-00993-5/home.html

3.MihailescuのHP1.

http://www-math.uni-paderborn.de/~preda/
…うっわあ、ぐっちゃぐチヤ〜!!

4.MihailescuのHP2.

http://www.inf.ethz.ch/~mihailes/

5.Yuri.Biluってこんな人。

http://www.math.u-bordeaux.fr/%7Eyuri/pictures/friends.htm

6.GTM83(ワシントン)

今週は、「内容」の3.までは絶対やるとして、4.まで行くかなあ?という感じです。


10/28 タイトル:Grothendieck-Riemann-Roch

発表者:今井 直毅 氏

内容: 前回の続きです。Grothendieck環のChern指標を定義したあと、 とある図式が可換であることを示します。


10/21 タイトル:Grothendieck-Riemann-Roch

発表者:今井 直毅 氏

内容: 代数体の整数論の理論と代数曲線の理論には ある種のアナロジーが存在することが知られており、 その一つとして整数論における 完全イデアルに対するRiemann-Rochの定理があります。

今回紹介するGrothendieck-Riemann-Rochの定理は Grothendieckが編み出した定式化にのっとったもので 前述のRiemann-Rochの定理の拡張となっています。

予備知識は代数体の簡単な知識 (整数環や分数イデアルがどういったものかという程度)です。 あと射影加群に関する命題をいくつか使いますが 本論とはあまり関係ないので知らなくても問題ありません。


10/14 タイトル:Howe duality

発表者:阿部 紀行 氏

内容: GとHを群とし,G×Hの表現Vの既約表現を考えます.一般に直積の既約表現は 各々の既約表現のテンソル積となるため,この既約分解は

V = \oplus σj\otimes τj

となります(σjjはそれぞれG,Hの既約表現). 一般にはこのような分解は統制不可能なものですが,特殊を考えることによりσ jとτjにより既約表現(の一部)の間に一対一の対応がつくことがあります.

今回紹介するHowe dualityはそのような双対性の一つです(厳密には上とはちょ っと違った対応付けになりますが.).いくつかバリエーションがありますが, 例えばSp(2m,R)×O(n)をより大きな群Sp(2mn,R)に埋め込み,Sp(2mn,R)のWeil表 現の制限を考えるとdualityが成り立つ,といったものがあります.表現論的な 興味は勿論のこと,整数論にも応用があるようです(全然知りませんが.).

今回紹介するのは,Howe dualityの中でも最初にHoweにより発見された片方が compactな場合を紹介します.また,その応用として

・古典的な球面調和関数の理論

・Hodge分解

・unitary群のcohomology

等について話したいと思います.

線形代数及び表現論に関する若干の知識(Schurの補題くらいまで)があれば殆 ど支障はないと思います.一部の例等でLie群に関する知識を必要としますが, Lie群とLie環の対応程度を知っていれば十分だと思います.


10/7 タイトル:Picard-Vessiot理論入門

発表者:萩原 啓 氏

内容: 一変数代数方程式論の最も洗練された形の一つとして、 体の拡大をその自己同型群(Galois群)を以って捉えるGalois理論があります。 Picard-Vessiot理論は、これの線形常微分方程式版といえるものです。

もう少し具体的に言うと、 通常の四則演算に加えて微分と呼ばれる操作を持つ微分体というものを考え、 その拡大を微分Galois群によって理解しようというものです。 今回はこれの簡単な解説を行います。

応用例として、Airy型の微分方程式y''+xy=0の解が、 「初等的には表されない」ことの証明を与えます。

予備知識としては、Galois理論までの代数学の知識位で十分だと思います。


9/30 タイトル:フーリエの熱の理論とフーリエ級数

発表者:植村 栄治 氏

内容: フーリエは固体の中を熱が伝わっていく様子を数式で表現しようとしました。彼 は、苦労の末に熱の伝導の微分方程式を見出します(1805年頃)。そして、環、 球、円柱、立方体など種々の形状の物体を想定し、加熱や冷却等の条件を適当に 設定してt秒後あるいは無限時間経過後の温度を求めるための微分方程式を立 て、それを解いてみせます。

その過程で新しい数学的手法が必要とされ、フーリエは任意の関数を三角級数に 展開する手法を編み出しました(1807年の未刊行論文)。これがフーリエ級数で す(1822年の著書で一般に発表されて有名になる)。

もっともその後の数学の発展により、すべての関数が必ずしもフーリエ級数に展 開できるわけではないことが次第に分かってきます。フーリエは任意の級数が フーリエ級数に展開できることについて2〜3通りの「証明」を与えています が、それらの証明は当然、すべて誤っているわけです。

今回のセミナーでは、x の奇数次のべき乗のみからなる関数はan sin nx の無 限和の形で表せる(n は1以上の整数)という命題を長い計算によって「証明」 する部分を主に紹介します。この「証明」を修正してなるべく広範囲の関数に対 して通用させるにはどうすればよいかは、結構難しい問題のようです。ルベーグ はある論文の中でフーリエの「証明」を簡素化することはできても欠陥を除去す ることはできなかったと述べています。

なお、時間の余裕があれば、種々の形状の物体の温度変化を求める諸設題につい てフーリエがどのような解を与えたかを解説します(途中でベッセル関数等が登 場するケースもあります)。

予備知識:

微分積分学とフーリエ級数の基本知識で十分です。


9/16 タイトル:差集合の性質について

発表者:斎藤 新悟 氏

内容: \mathbb{R} の部分集合 A に対して, A - A := { x - y | x,y \in A } を A の差集合と呼びます。

差集合については,比較的よく知られた定理として, 次の Steinhaus の定理があります:

A を \mathbb{R} の Lebesgue 可測な部分集合で Lebesgue 測度が正のものとすると, A の差集合は 0 を内点にもつ。

今回のセミナーでは,上記の定理を含め, 差集合に関するいくつかの定理を紹介します。

予備知識:

Lebesgue 測度の定義,および 順序数・基数に関する若干の知識を仮定します。 後者については,\omega1 と聞いて何だか分かれば大丈夫です。


7/15 タイトル:層・圏・トポスと直観論理

発表者:山下 温 氏

内容: 前回は「層・トポス」をやりましたが, トポスについては十分にできませんでした. できなかった内容も含めて今までの 発表内容は http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~yonster/downloads.html に近日中にアップロードしますので, さらっと見ていただけると幸いです.

次回は最終回です.直観論理について お話しますが,多分今までの中で 一番証明をすることになるでしょう. (というか,今までの二回はほとんど 何も証明しませんでした.) 話題をしぼらざるを得ないので, 何を話すかを検討中です.


7/8 タイトル:層・圏・トポスと直観論理

発表者:山下 温 氏

内容: 7月1日の発表では, 予定ほど沢山の話はできません でした.このセミナーは雰囲気も大事なので 先を急ぐのがすべてではないと思いますが, 遠方からお越しの方(がもし見ておられるなら)は ゼミの進み具合を 見計らってお越しください.

次回7月8日は 層・トポスを中心とし,できれば直観論理 のさわりを解説します. ゼミの進行状況,準備状況等は,私の日記 http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~yonster/index.html などを見るとよく分かるでしょう. このページ内の「ゼミの資料など」という所 http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~yonster/downloads.html には,7月1日分の発表内容に関する資料を 数日内にアップロードします. このプリントを時間をかけて 予習するならば,おそらくその場で聞いた以上に 内容をよく理解できるものと思われます. 是非活用してください.


7/1 タイトル:層・圏・トポスと直観論理

発表者:山下 温 氏

内容: 層にも圏にもトポスにも馴染みがなく,直観論理についても素人である私が,それら の間の関連について語るというとんでもない企画です.おそらく層・圏・トポスにつ いては代数/数論幾何の皆さんがよくご存知のことと思いますし,直観論理について も造詣の深い方が聴衆の中にはおられることと思います.したがって,このセミナー は無知な発表者が聴衆に教えを乞いながら行われることでしょう.

内容は

竹内外史『層・圏・トポス―現代的集合像を求めて―』(日本評論社 1978年)

の解説です.

発表の大まかなスケジュール

3回シリーズでやります.

第1回:層・圏・トポスの導入

第2回:直観論理の導入,完全性定理

第3回:高階直観論理―トポスから論理へ,論理からトポスへ―

私はこの書物を,題名に夢があるというただ それだけの理由で読み始めました. 自分で読んでそれなりに納得して終わりでは 勿体無いので,こういう発表をしてみようと 思った訳です.ちなみに第3回の内容は 未読のためどうなるか分かりません.

証明は時間の関係上あまりできません. その辺はプリントなどでできる限りフォローする つもりです.

予備知識:基本的には数学科「集合と位相」 レベルの知識でいいですが,順序数と基数を 知っていた方がよい場所があります. 岩波基礎数学「集合と位相」を読みこなした人 ならばまず問題はありません.ついでに この本での「連続関数の層」の定義を見ておくと いいでしょう. 一応圏の定義を集合論で正当化したいと 思いますが,この辺は分からなくても その後の理解に全く影響ありません.

多方面からの参加を期待しています.


6/24 タイトル:SL(2,R)の表現論

発表者:阿部 紀行 氏

内容: 前回の続きです.今日分類した(g,K)-moduleに従い具体的に既約unitary表現を構成します.


6/17 タイトル:SL(2,R)の表現論

発表者:阿部 紀行 氏

内容: 表現論というのは群の表現を調べる学問ですが,その群としてよく対象となるク ラスに半単純Lie群というクラスがあります.その中でも最も小さなものがSL(2,R)です. 今回のセミナーはこのSL(2,R)の表現を調べます.具体的には

・有限次元既約表現

・既約unitary表現

を分類します.

議論は殆ど線形代数のみを武器にして進みますが,途中関数解析の言葉を借りる ことがあります.定義より上のことは殆ど使わないつもりですので,その場で聞 いていただければ問題ないと思います.


6/10 タイトル:時間遅れをもつ常微分方程式

発表者:河内 一樹 氏

内容: 近年「過去の状態の影響を考慮した常微分方程式」(関数微分方程式) の重要性が認識され始め、 多くの理学・工学の分野や、数理生物学の分野で 関数微分方程式で記述されるモデルを考える動きが活発になっています。

今回紹介する内容は次の通りです:

・イントロダクション

時間遅れを入れることによる効果を、 非常に簡単な例で紹介し、 数値計算の結果および、ごく初等的な結果を紹介します。

・基礎定理

時間遅れを考えない、1階正規形常微分方程式の一般論が 関数微分方程式にどの程度拡張できるかを紹介します。 例えば、解の存在と一意性、延長可能性、 パラメータに関する連続依存性などです。

予備知識:教養課程の微積分の知識で十分です。

参考文献:「タイムラグをもつ微分方程式−関数微分方程式入門」(牧野書店)

今回のセミナーではこの第1章、第4章を紹介します。


6/3 タイトル:p進関数解析入門(続き)

発表者:山本 修司 氏

内容: 前回やり残したHahn-Banachの定理を証明した後, コンパクト作用素をはじめとする幾つかの作用素のクラスを定義し, Fredholm-Rieszの理論を紹介します. (もちろんいずれもnonarchimedean版です.)


5/27 タイトル:p進関数解析入門

発表者:山本 修司 氏

内容: 関数解析というのは大雑把に言って(主として無限次元の)位相ベクトル空間と, それらの間の線型作用素の理論です.解析学に現れる種々の関数空間などは たいてい無限次元で,普通の線型代数ではほとんど歯が立たないので, これらを調べるときには適当に位相を入れて関数解析を応用することになります. (関数解析という名前もこの辺から来ています.多分.)

ところで,比較的多くのひとにとって,解析学といえば実または複素解析であり, 関数解析といえば(実または)複素数体上の位相ベクトル空間論を指すようですが, 今回扱うのはp進数体,または一般に完備超距離体上の理論です. これらの体上の解析や表現論をやろうとすると,こういう理論が必要になるわけです. 「そんなの興味ないもん」とか言わないでください.

具体的にやることは実はまだあまり決まっていませんが, 基本的な定義から始めて,Fredholm理論までやろうと思っています. 参考文献は

Schneider, Nonarchimedean Functional Analysis, Springer

です. (ちなみに上記文献では最終節が Fredholm Theory となっていますが, この本の内容を全部やるわけではありません.当たり前ですけど.)

予備知識としては,(普通の)線型代数と距離空間・位相空間の初歩を 知っていればいいと思います.p進数体の定義も知っているとなお良いです. 特に,複素数体上の関数解析については知らなくてもかまいません. (発表者も大して知りません.知っている人は彼にいろいろ教えてあげましょう.)


5/20 タイトル:付値論と代数幾何

発表者:三枝 洋一 氏

内容: 前回の続きです.


5/13 タイトル:付値論と代数幾何

発表者:三枝 洋一 氏

内容: 商体 K をもつ整域 A が条件

x\in K^* ならば x\in A または 1/x\in A

を満たすとき,A を付値環と呼びます.Noether環である付値環は 離散付値環と呼ばれ,整数論や代数幾何において重要な役割を 果たしていることはご存知の方も多いでしょう.その一方で, 離散でない付値環,特に高さが2以上の付値環の理論の有効性は あまり知られていないように思います(むしろ,スキーム論の台頭に よって忘れられたと言うほうがよいかもしれません). このセミナーでは,2次元代数多様体の特異点解消を題材に,代数幾何に おける付値環の応用について論じたいと思います.

予備知識としては,環論・体論の初歩(局所化・Noether環論の初歩・ガロア理論など) を仮定したいと思います.代数幾何の知識は仮定せず,ナイーブな説明を行う予定 ですが,(ふつうの)多様体の定義を知っておいたほうがよいかもしれません.

セミナーは2回連続で行う予定です.初回は付値環の基礎的な性質を説明し, 2変数有理関数体 k(x,y) を商体としてもつ付値環を分類する予定です.


5/6 タイトル:Burnside の定理 (2)

発表者:近藤 宏樹 氏

内容: 前回の続きです。 まだ群論的な部分には入っていないので、 表現論の基礎的な部分をある程度知っていれば 今回から来ていただいても内容については問題ありません。


4/22 タイトル:Burnside の定理

発表者:近藤 宏樹 氏

内容: 今回のセミナーでは、Burnside による一つの定理である 位数がちょうど 2 つの素数を約数にもつ群の可解性 を証明することを目標とします。

群の可解性は、方程式の可解性に登場するのを初めとして 重要な概念で、群論においては群の可解性を調べることは 一つの主要な目的ですが、 今回のこの定理の証明には有限群の表現論を主に用います。

予備知識としては、学部 1 年生程度の線型代数、及び 群論の初歩的な知識(群の作用など)を仮定します。 有限群論における非常に基本的な結果である Sylow の定理を用いますが、結果を認めていただければ 知っている必要はありません。 群の可解性や表現論については定義から始める予定です。


4/15 タイトル:Milnor construction

発表者:今井 直毅 氏

内容: universal bundleはbundleを分類したり、 特性類を定義したりする上で非常に重要な役割を果たしています。

底空間がパラコンパクトなHausdorff空間であるvector bundleに対しては 無限次元Grassmann多様体を底空間にもつ universal bundleが存在する事が知られていますが、 今回はより一般にnumerable principal G-bundleに対しての Milnorによるuniversal bundleの構成を紹介します。

bundleの知識は仮定しない予定です。 群や位相空間を少し知っていれば大体わかると思います。


3/4 タイトル:Alexandroffの問題

発表者:佐野 太郎 氏

内容: 内容は前回の続きです。定理を4つの補題を使って示します。


2/26 タイトル:Alexandroffの問題

発表者:佐野 太郎 氏

内容: 位相空間論の難問の一つにAlexandroffが1923年に提出した次の問題があります。

「第1可算性を満たすコンパクトT_2空間の濃度は連続濃度を超えないか」

この問題は約半世紀の長い時間を経て 自由列という新しい概念を使ったArhangel'skiiにより1969年に解決されました。 今回の発表ではその方法に依らず Ponomarevによる簡単化された方法に沿って証明します。 この証明では、極限点列が関係する「列型空間」、 列型空間において普通の閉包と一致する「列包」、 稠密集合の最小濃度「稠密度」と位相濃度の関係、 などの概念を使います。

仮定する知識は特にありませんが、 位相についての知識が少しだけあれば問題ありません。


2/19 タイトル:最高ウェイト理論とBorel-Weilの定理

発表者:阿部 紀行 氏

内容: 前回の続きになります.Borel-Weilの定理を証明し,少し簡単に例を出したいと思います.


2/12 タイトル:最高ウェイト理論とBorel-Weilの定理

発表者:阿部 紀行 氏

内容: (Lie)群Gが与えられたとき,そこから行列のなす群への準同型写像を表現といい, その中である意味構成要素となっているようなものを既約表現といいます. 与えられた群に対しその既約表現を分類することは重要な問題ですが, 一般の群に対しては非常に難しい問題となります.

ところが,コンパクトなLie群に対しては状況は非常に簡単になります. 最高ウェイト理論とは,コンパクトLie群の既約表現が与えられたとき, 「最高ウェイト」と呼ばれるある整数の列を対応させることが出来, それによって既約表現を分類することが出来るという理論です. これにより,既約表現をある整数列でパラメタライズすることが出来ます.

ところが,与えられた整数列に対しどのような既約表現が対応するかに関しては最高ウェイト理論は答えてくれません. これに答えるのがBorel-Weilの定理であり, 与えられたある複素多様体上の正則関数の部分空間にその既約表現を実現することが出来るというものです.

今回はLie群論の基本から始めて上記二つの理論を紹介したいと思います. 予備知識としては線形代数,複素関数論(というかLiouvilleの定理),及び多様体(というか接空間の定義)です. あまり難しいことを用いず線形代数のみで話を進めるつもりです.


2/5 タイトル:再帰論とヒルベルトの第十問題

発表者:河村 彰星 氏

内容: 前回(先々週)の続きです.


1/29 タイトル:実連続関数環 C(X) と X の位相との関係

発表者:山下 温 氏

内容: 位相空間 X と,その上の実連続関数環 C(X) とには,密接な関係があります. C(X) に考えられる構造としては,各点での演算による環構造のほかに, 順序関係による束(lattice)構造があります.今回は,X がコンパクト T_2 のとき, X の位相構造が C(X) の束構造によって決定されることを示します. その過程では,束の「素イデアル」と,それに「同伴(associate)する点」という 概念が大活躍します.

実は C(X) の環構造は束構造を決めてしまうので,このことから,X の 位相構造は C(X) の環構造で決定されることが分かります.

更に発展として,X がコンパクトとは限らない場合も考えることにします.

予備知識は,一年生の解析および位相空間論ですが,もし知らないことが あれば,質問に応じて説明します.


1/22 タイトル:再帰論とヒルベルトの第十問題

発表者:河村 彰星 氏

内容: 整数を係数とする与えられた多項式の整数解の有無を判定する手続きを与えよという ヒルベルトの第十問題は,1970 年にマチャセビッチによって否定的に解かれました. すなわち,そのような機械的な手順が存在しえないことが示されたのです.

この結果に厳密な意味を与えるには,「実効的に(有限的な手続きで)判定できる」 とはいかなることかを,理解する必要があります.実際,1900 年に提示された第十 問題が解かれるためには,その数十年後に興る再帰論(recursion theory)の成熟を 待たなければなりませんでした.

この発表では,決定可能性の定式化に必要な再帰論の基礎を解説し,第十問題の決定 不能の証明の大筋を紹介します.仮定する予備知識は特にありません.


1/15 タイトル:コンパクト性定理

発表者:池上 大祐 氏

内容: 前回の続きです。 前回証明したコンパクト性定理を使って, 代数閉包の存在,Ax の定理 etc. を証明します。 代数とはちょっと違った考え方を少しでも伝えられたらなぁ,と思ってます。

予備知識:

コンパクト性定理,素朴集合論,3年で習う代数学の知識くらいがあれば, 話の大筋は分かると思います。 (途中の議論で cardinal がでてきますが,あまり気にしないで下さい。)


1/8 タイトル:コンパクト性定理

発表者:池上 大祐 氏

内容: コンパクト性定理とは,

「sentence の集合 T に対し,T がモデルを持つことと T の任意の有限部分集合がモデルを持つことは同値である。」

という定理です。 (「sentence」,「〜がモデルを持つ」は,セミナー中に定義します。) コンパクト性定理はロジックを勉強し始めるとすぐ習う重要な定理で, モデル論では頻繁に使われます。 今回は,命題論理,一階述語論理でのコンパクト性定理を紹介・証明し, 時間に余裕があれば, コンパクト性定理の数学への簡単な応用をやりたいと思います。

予備知識:

予備知識としては,素朴集合論,位相空間論(特にチコノフの定理), ultrafilter の定義とその基本的な性質があれば, 話の大筋は分かると思います。