2003 年のなんでもセミナー


12/11 タイトル:Banach-Mazur ゲーム

発表者:斎藤 新悟 氏

内容: \mathbb{R} の非退化有界閉区間 I_0 の部分集合 S を固定します。 A さん,B さんの 2 人がいて, A さんは I_0 の部分非退化閉区間 I_1 を取り, B さんは I_1 の部分非退化閉区間 I_2 を取り, A さんは I_2 の部分非退化閉区間 I_3 を取り, B さんは I_3 の部分非退化閉区間 I_4 を取り,... と繰り返すと,\bigcap_{n=1}^{\infty} I_n は空でない集合になります。 この集合と S との共通部分が空でなければ A の勝ち, 空ならば B の勝ちとします。 このようなゲームを Banach-Mazur ゲームといいます。

今回のセミナーでは,このゲームの必勝法について考察します。


12/4 タイトル:Sierpiński-Erdős 双対定理

発表者:斎藤 新悟 氏

内容: \mathbb{R} の「小さな」部分集合を表す概念として, 零集合という測度論的なものと, やせた集合という位相的なものがあります。 零集合とは,Lebesgue 測度が 0 である集合のことで, やせた集合とは, 閉包の内部が空集合であるような集合の 可算個の和集合で表せる集合のことです。

これらの 2 つの概念の間には,包含関係はありませんが, 関係を表す定理として, 次の Sierpiński-Erdős 双対定理があります:

連続体仮説を仮定すると, f: \mathbb{R} --> \mathbb{R} であって, f^2 = id を満たし, 任意の E \subset \mathbb{R} に対して E がやせた集合であることと f(E) が零集合であることが同値になる ようなものが存在する。

今回のセミナーでは,この定理を証明します。

一応の予備知識として, \mathbb{R} の位相と \mathbb{R} 上の Lebesgue 測度を仮定しますが, 聴衆に応じて適宜説明します。 集合論的知識(\omega_1 など)は仮定せずに話をするつもりですが, 知っている人向けの注もいくつかするかもしれません。

参考文献は,

John C. Oxtoby 著 ``Measure and Category''(GTM 2)

です。


11/27 タイトル:開折理論の紹介

発表者:篠原 克寿 氏

内容: $C^{\infty}$写像の特異点の様子を知りたいと思うとき, もとの写像に適当にパラメーターを入れて, そのパラメーターを動かした際の特異点の振る舞いを調べよう, と考えるのは自然な発想だと思います.

開折(unfolding)理論というのは上に述べたような状況での 特異点の振る舞いに基づいて,特異点を分類してしまおうという理論です. 扱うものが$C^{\infty}$関数という"dirtyな"ものなので, 一般的にやろうとすると微分位相幾何学の重装備で 臨まなければならないのですが, 今回の話では一変数の場合に限定することで, 全体的・技術的な話が両方とも(それなりに)できるようにします.

予備知識は多変数関数の微積分がなんとなくわかって いれば大丈夫だと思います.多様体の知識は要りませんし, 長い発表にはしない(一回で終わらせる予定)ので若い人も 気軽に聞きにきてください.


11/20 タイトル:超越数論入門

発表者:近藤 宏樹 氏

内容: 前回、前々回の続きで、Gelfond−Schneiderの定理の証明を目標とします。 議論の流れは前回、前々回とはほぼ独立です。


11/13 タイトル:超越数論入門

発表者:近藤 宏樹 氏

内容: 前回の続きです.


11/6 タイトル:超越数論入門

発表者:近藤 宏樹 氏

内容: 超越数についての基本的な結果を、基礎的な知識から丁寧に導いて紹介します。 主に扱うのは、e及びπの超越性と、 「代数的数の有理数でない代数的数乗は超越数である」というゲルフォント―シュナイダーの定理です。 これを応用することで、具体的に様々な数の超越性を示すことができます。

前提とする知識で高校数学を超えるものは、 大学 1 年前期程度の微積分、線形代数と、体の拡大の概念のみで、 他はすべて内容に含める予定です。 発表回数は 2 回ないし 3 回を予定しています。


10/30 タイトル:Mostow's Rigidity Theorem

発表者:長尾 健太郎 氏

内容: 前回終わらなかったところをやります.二つめの補題の証明と定理の証明をします. 内容的には前回とかなり独立なので,前回不参加の方でも是非いらしてください.


10/23 タイトル:Mostow's Rigidity Theorem

発表者:長尾 健太郎 氏

内容: $\text{定曲率曲率}=-1$の完備リーマン多様体を双曲多様体と呼びます.

2次元の場合,双曲構造は複素多様体の構造と一致します. リーマン面(2次元有向閉多様体)を一つ固定したとき, そのリーマン面に入る複素多様体構造全体はリーマン面のモジュライ空間と呼ばれ, 2次元の幾何学の研究対象となっています. これに対して,次元が3以上のときは多様体のトポロジーを固定すると, そこに入る双曲構造は高々1つであることが知られています. したがって,双曲構造はそれ自体が研究対象になるというよりむしろトポロジーを調べる手段となるわけです.

今回は「次元が3以上のときは多様体のトポロジーを固定すると, そこに入る双曲構造は高々1つであること」を証明します.

0. Introduction & Statement of Rigidity Theorem

1. Proof of Lemma1

2. Gromov Norm & proof of Lemma2

3. Proof of Rigidity Theorem

予備知識:

基本群,被覆空間,特異ホモロジー(定義程度)

あまり予備知識のいらない話になるはずです(する予定). 複素解析でやる上半平面と一次分数変換を知っていると馴染みやすいと思います.


10/16 タイトル:Peter-Weylの定理 4

発表者:郷家 駿平 氏

内容: ようやく最終回です. SU(2)とSO(3)の既約表現を分類するのが目標です.


10/9 タイトル:Peter-Weylの定理 3

発表者:郷家 駿平 氏

内容: 思ったより進みが遅いので,もう少し延ばさせていただきます. 来週(10/9)はPeter-Weylの定理を扱い(含 証明), 再来週はそれを実際にトーラス以外のコンパクト群に適用する, という予定です.


10/2 タイトル:Peter-Weylの定理 2

発表者:郷家 駿平 氏

内容: 前回のなんでもセミナーでは, 予定の1/3くらいしか終えられなかったので, 3回に分けて話すことにします.

コンパクト群上の「由緒正しい関数」である 行列要素を定義するところから始めます. 目標はPeter-Weylの定理の証明です. 定理の応用と具体例を最終回に話す予定です.


9/25 タイトル:Peter-Weylの定理

発表者:郷家 駿平 氏

内容: T = R/2\pi Z 上定義された連続関数(正しくは,2乗可積分関数)は, Fourier展開により e^{int} (n\in Z) という関数の線形結合で近似されます. 一方 e^{int} という関数は,Tの(1次元)既約ユニタリ表現と見ることができ, 逆にTの既約ユニタリ表現にはそのようなものしかないことも示されます. その意味で,e^{int}は「由緒正しい」関数であるわけです.

Peter-Weylの定理はFourier展開の一般化であり, 任意のコンパクト群Gに対して,

・Gの既約ユニタリ表現は有限次元

・Gの既約ユニタリ表現からくる「由緒正しい」関数(行列要素)が, L^2(G)の完全正規直交系 (すなわち,L^2(G)の任意の元は行列要素の線形結合で近似される)

であるということを主張しています.

主定理を一般に示そうとすると激しい関数解析になってしまい, 不勉強な私にはよくわからないので, GがGL(n,C)の部分群(コンパクトLie群)の場合に Stone-Weierstrassの定理を用いた初等的な証明を行いたいと思います.

位相群や表現の定義などは発表中に与えるので, 予備知識としては線形代数と位相空間論の初歩を仮定します. 有限群の表現論,それからL^2空間の知識があるとだいぶよいのではないでしょうか.

参考文献:

「Lie群とLie環 1」(小林俊行・大島利雄,岩波講座 現代数学の基礎)

今回は基本的にこの本の第1章〜第4章に従います. てゆーか,そのまんまです(汗


7/17 タイトル:Shanin コンパクト化

発表者:山下 温 氏

内容: コンパクト化の理論は T_2 のカテゴリーでは比較的きれいに展開され, 「最大の」コンパクト化として Stone-\check{C}ech コンパクト化の存在が示されますが, T_1 のカテゴリーでも,ある意味でコンパクト化を統制するような コンパクト化の構成法が知られており, それがShanin コンパクト化と呼ばれるものです. それは,相手にする空間の範囲が広がったということよりも, コンパクト化に対する新しい見方を与えるという点で注目されるべきものだと思います.


7/10 タイトル:局所対称領域の正則写像の変形

発表者:伴 克馬 氏

内容: 各点での“点対称”が定義されるようなリーマン多様体を対称空間といい, さらにそれが(等長変換群の作用に関して不変な)複素構造をもつとき,有界対称領域といいます. 対称空間(有界対称空間)の,等長変換群の離散部分群による商を局所対称空間(局所対称領域)といいます. たとえば,リーマンの一意化定理は,リーマン面が局所対称領域であることをいっています (この場合,上半平面が有界対称領域です.有界じゃない,とおもうかもしれませんが,これは実現の仕方の問題です). 局所対称空間(領域)は微分幾何や保型形式の基本的な対象で,たくさんの研究がなされています.

局所対称領域のあいだの正則写像が,等長変換群のあいだの準同型から引きおこされているとき, この正則写像の変形は面白い性質をもっていて, 自然にきまる第3の局所対称領域上に各点で特性写像が同型になる族ができることが分かります. 特にジーゲルモジュラー多様体への正則写像の変形だとおもうと, これは久賀−伊原の論文の結果をあたえることになります. このセミナーではこのあたりのことを話そうとおもいます.

予備知識は.複素多様体や,リー群の接空間がリー環になるとか,そういったことを知っているといいとおもいます. リーマン多様体とか微分幾何的なはなしはしない(できない)ので,しらなくても大丈夫です.


7/3 タイトル:Weil表現の構成とその応用

発表者:阿部 紀行 氏

内容: 局所体上のベクトル空間上の非退化交代形式を不変にする線形写像全体をシンプレクティック群といいますが、 今回はその上の二重被覆群およびWeil表現と呼ばれるあるユニタリ表現を構成します。

このWeil表現はSiegel - Weilの公式に始まり、保型L関数の特殊値と関わったり、 theta級数の表現論的理論となったりと、非常に重要な表現です。

今回はこのWeil表現をWeilの原論文に従って構成し、余裕があればtheta級数との関係を述べたいと思います。

予備知識としては、局所体及び測度論の基本を仮定したいと思います。


6/26 タイトル:2次形式に関するMilnorの予想について

発表者:萩原 啓 氏

内容: 前回の続きです.


6/19 タイトル:2次形式に関するMilnorの予想について

発表者:萩原 啓 氏

内容: 前回の続きです.


6/12 タイトル:2次形式に関するMilnorの予想について

発表者:萩原 啓 氏

内容: 体Fに対し、F上のベクトル空間VからFへの写像Q:V->Fが、 ある(or任意の)Vの基底表示に関して斉次2次式で表されるとき、組(V, Q)を2次形式と呼びます。 これは最も古典的且つ基本的な数学的対象の一つでありながら、今なお様々な研究が盛んに進められています。 とりわけ、Milnor予想を中心として成長を続けてきた2次形式の分類に関する理論は、 新たな装いの下、近年ますます活発に発展しています。

Milnor予想とは、2次形式の分類の鍵となる(Grothendieck-)Witt環(注1)が、 Milnor K群やGaloisコホモロジーといった全く異なる代数的対象と結びつくことを予言したものです(注2)。 これが先頃Voevodsky等によって解かれた事は既に耳目に触れていることと思います。 今回はこの予想の定式化及び低次数の場合の証明を紹介する予定です。

初等的に解説する積りですので、予備知識は余り必要ありません。 Galois理論までの代数学の知識と、初歩的なホモロジー代数の知識程度で9割方理解できると思います。 途中で挙げる例を理解する為には、有限体や局所体、代数体についての知識が少し必要になりますが、 定義を知っている程度でも十分だと思います。

注1:某完備離散付値環のことではない。

注2:Morel, VoevodskyによるA^1ホモトピー論の言葉では、 mod 2 モチヴィックコホモロジーとそのエタール実現及びモチヴィック安定ホモトピーとの関係を述べていると解釈できる(らしい)。


6/5 タイトル:Lefschetz跡公式の紹介

発表者:三枝 洋一 氏

内容:前回の続きです.


5/29 タイトル:Lefschetz跡公式の紹介

発表者:三枝 洋一 氏

内容:前回の続きです.


5/22 タイトル:Lefschetz跡公式の紹介

発表者:三枝 洋一 氏

内容: Lefschetzの跡公式とは,多様体 X から自分自身への射 f:X->X の固定点の個数を f がコホモロジーに引き起こす準同型 f^* の跡(トレース)の交代和で表すというものです. これは位相幾何学においてさまざまな応用を持つとともに, エタールトポロジーにおいても重要な役割を果たします. 例えば,有名な合同ゼータ関数の有理性はエタールコホモロジーのLefschetz跡公式の帰結として証明することができます.

今回のセミナーでは,上で述べたLefschetzの跡公式がいつ成立するかを紹介します. 跡公式は無条件では成り立たず,多様体と係数層,f に適切な条件を付けることが必要になってきます. コンパクトな多様体の定数層係数コホモロジーにおける跡公式が Poincare双対定理,Kunneth同型の帰結であるのは周知の事実だと思いますが, このコンパクト性を外すとどうなるかが主要な論点となります.

セミナーは2週連続で行われます.興味のある人もない人も是非聞きに来てください.

0. Introduction

1. Six functors and Lefshetz-Verdier trace formula

2. Lefschetz trace formula for open manifolds

3. Lefschetz trace formula for varieties over a finite field -- Deligne's conjecture

4. Application??????????

予備知識:

使うコホモロジーは位相空間上の層係数コホモロジーと$\ell$進エタールコホモロジーです. 一般にコホモロジーと呼ばれているものに対し何が成り立つべきか (関手性やPoincare双対性,cycle mapなど)ということを知っていれば十分だと思います. また,必須ではありませんが導来圏についての慣れがあると話が聞きやすいと思います. それ以外には,必要に応じて代数幾何の基礎的な事実を用いるかもしれませんが, たぶん多様体論で言い換えることができると思うので,そのほうがいい人はそうしてください.

参考文献

A. Grothendieck, et.al. SGA5

M. Goresky, R. Macpherson Local contribution to the Lefschetz fixed point formula, Invent. math. 111 (1993)

K. Fujiwara Rigid geometry, Lefshetz-Verdier trace formula and Deligne's conjecture


5/15 タイトル:Bott消滅定理について

発表者:松尾 信一郎 氏

内容: Frobeniusの定理が葉層の存在への局所的障碍を記述するのに対して、 Bott消滅定理は葉層の存在への大域的障碍を記述し 葉層の法束のPontrjagin環がある次数以上で消えることを主張します。

Bottの定理はその主張その証明ともに簡素簡単でありながら、 葉層の研究のqualitativeな視点からquantitativeな視点への転換を宣言した記念碑であり、 その後の展開の進路を決定付けました。 葉層の位相的理論は全て消滅定理の系だと言っても過言ではありません。 例えば、Godbillon-Vey類の存在への根拠を与えます。 (その正確な意味はゼミで話します。) でも、少し大げさかもしれません。(笑)。

今回のゼミは:

1.Chern-Weil理論の速成コース

2.Frobeniusの定理

3.Bott消滅定理の証明

4.展開

と章立てし、まずはBottの定理に完全な証明を与えることが目標になります。 微分形式の幾何学の第一分冊で予備知識は万全です。 4.展開は時間と能力の許す範囲で消滅定理のもたらしたものについて趣味に走ります。


5/8 タイトル:総実代数体のp進L関数について

発表者:山本 修司 氏

内容: Riemannゼータ関数の負整数における値はBernoulli数を用いて表される有理数であり, p進ゼータ関数と呼ばれるp進整数環上のp進数値連続関数によって補間されます. (このことについては昨年5/16のなんでもセミナーで林田氏による解説がありました.)

今回は,総実な代数体のゼータ関数に対するp進補間を扱います. 総実体のp進ゼータ関数の構成法は, Deligne-Ribetによるp進 Hilbert modular form を用いるものと, Barsky,Cassou-Nogu\`esによる新谷の公式を用いるものが知られていますが, 今回紹介するのは後者の方法です. (前者は僕には難しくて分かりません.誰か教えてください.)

予備知識としては,学部3年の必修科目程度の一般的な知識のほかに, p進数の定義や簡単な性質,代数体に関する基本的な知識 (イデアル類群の定義など)が必要です.多分.


5/1 タイトル:葉層構造の特性類

発表者:篠原 克寿 氏

内容: 前回の発表では葉層構造の定義をして, Godbillon-Vay 特性類の定義がちゃんと定義になってるという話までしました. 次回はこれを使ってThurston の定理の話をします.

今回聴きに来なかった人は,岩波からでている森田茂之「特性類の幾何学」とかの 適切な部分を読んで勉強するか,賢い人に教えてもらうかしてください. もっとも,怪しげな絵をたくさん書くので雰囲気だけは楽しめるかもしれません.


4/24 タイトル:葉層構造の特性類

発表者:篠原 克寿 氏

内容: 前回の「葉層構造の特性類」の続きです.


4/17 タイトル:葉層構造の特性類

発表者:篠原 克寿 氏

内容: $M$ を多様体とし,$f$ を$M$ 上の関数とします. このとき,集合

N_r = \left\{ x \subset M \mid f(x) = r \right\}

は,だいたい$M$ の中の余次元$1$ の部分多様体となります. $r$ を動かして得られる集合族$\{ N_r \}$は余次元$1$ の葉層構造であるといわれます. ある多様体に本質的に異なる葉層構造がどれくらい存在するか, というのは幾何学的に興味のある問題です. 今回の発表では葉層構造に対してGodbillon-Vey 特性類というものを定義して, いくつかの葉層構造に関してこの特性類を具体的に計算してみようと思います. 応用として,$S^3$ には本質的に異なる葉層構造が少なくとも連続濃度は存在する, というThurston の定理を証明します. 余裕があれば Thurston の定理の周辺についても話せたらいいなあ,と思っています.

予備知識:

・ないと困る知識:

多様体の基礎,de Rham コホモロジーの定義.

・知ってると話が聞きやすくなる知識:

Frobenius の定理,微分幾何学の基礎.

発表内容:

1. Preliminaries

2. Frobenius の定理

3. 微分幾何学の rapid course

4. 葉層構造の定義と例

5. Godbillon-Vey 特性類

6. Thurston の定理

話が長くなりそうであれば,二回に分けて話すかもしれません.


3/13 タイトル:K-Theory

発表者:中岡 宏行 氏

予備知識:ベクトル空間、位相空間、ベクトル束 等の定義

内容: compact Hausdorff space に対してK群と呼ばれる moduleを定義し、余力があればいくつかの性質を述べると思います。 殆どvector bundleの話になると思います。


3/6 タイトル:同値関係から作られるC*

発表者:勝良 健史 氏

内容: 集合Xの同値関係とは、E \subset X \times X で

(i) (x,x)\in E for x\in X,

(ii) (x,y)\in E => (y,x)\in E,

(iii) (x,y),(y,z)\in E => (x,z)\in E,

を満たす集合のことです。 Xの同値関係Eが与えられたとき、x\in X に対し { y\in X; (x,y)\in E } という集合をxの同値類といい、 同値類の全体の集合を商集合といいます。 Xが位相空間のとき、商集合に対し商位相という位相空間を 考えることができます。 今回のセミナーでは局所コンパクト空間上のある性質を満たす 同値関係(エタール同値関係とでも呼びましょうか)に対して、 C*環を構成する方法を紹介して、 このC*環が商集合とどういう関係にあるかを見ます。

先週話した内容は仮定しないので、先週来れなかった人や 来て教室にいたのに記憶が一部抜けてる人もお気軽に来て下さい。

セミナーの最後に先週の内容との関連や、 2週間話したことの周辺を話せたらいいなと思ってます。


2/27 タイトル:C*環の表現とスペクトラム

発表者:勝良 健史 氏

内容: 作用素環とは、Hilbert空間上の作用素のなす環である性質を満たすもののことをいい、 注目する位相の違いで、C*環とvon Neumann環の2種類があります。 C*環、von Neumann環はそれぞれ非可換位相空間、非可換測度空間と呼ばれたりしてます。 今回のセミナーの目標は、簡単なC*環の例をあげ C*環の表現理論をさらっと概観することにより、 なぜ作用素環は「非可換〜〜」と呼ばれているかを説明することです。

予備知識は、 コンパクト空間と(複素)Hilbert空間の定義くらいです。

難しい(テクニカルな)命題は、 どこが難しくどういう風に証明するかを説明するにとどめ、 簡単な具体例を詳しく説明することに主眼をおきたいなと思ってます。


2/20 タイトル:自己相似集合の Hausdorff 次元について

発表者:斎藤 新悟 氏

内容: 一般に,n 次元 Euclid 空間 Rn の部分集合の Hausdorff 次元を求めるのは容易ではありませんが, 自己相似集合と呼ばれる集合 (であって,ある条件を満たすもの)に関しては, Hausdorff 次元を求める定理が知られています。

f: Rn --> Rn について, ある 1 未満の正の数 c が存在して, 任意の x, y \in Rn に対して |f(x) - f(y)| = c |x - y| が成立するとき,f を縮小相似変換と呼び, c を f の縮小率と呼びます。 Rn の空でないコンパクト集合 K に対して, ある縮小相似変換 f1, \ldots, fm が存在して, K = \bigcupj=1m fj(K) を満たすとき,K を自己相似集合と呼びます。 f1, \ldots, fm がある条件(開集合条件と呼ばれる)を満たすとき, K の Hausdorff 次元を s とすると, \sumj=1n cjs = 1 が成立します(cj は fj の縮小率)。

例えば,Cantor 集合や Koch 曲線の Hausdorff 次元は, この定理を用いて求めることができます。

今回のセミナーでは,この定理を証明することを目標とします。

予備知識は, 距離空間の基本的性質,Hausdorff 次元の定義,測度論の基礎 くらいです。


2/13 タイトル:平方剰余の相互法則の一つの証明

発表者:阿部 紀行 氏

内容: 様々な証明が知られている平方剰余の相互法則ですが、 その中の一つを紹介したいと思います。 原型となるのはWeilが[1]でおこなったものです。 最初に局所コンパクト上の一般的な理論を展開し、 それを局所体の場合に計算することでヒルベルト記号の積公式を得る、 という形で行われます。 今回紹介する証明は久保田の[2]の結果を用います。 Weilが行った計算は一般的であるが故にとっつきにくいものでしたが、 局所体の場合には具体的な計算が出来、それを用いて同様の議論を行います。

局所体、及び測度論の基本的な知識を仮定したいと思います。

参考文献 :

[1] Weil A. : Sur certains groups d'operateurs unitaires , Acta. Math. 111(1964) , pp. 143-211

[2] Kubota T. : Topological covering of SL(2) over a local field , J. Math. Soc. Japan , vol 19(1967)pp. 114-121


2/6 タイトル:Generic vanishing theorem とその応用

発表者:戸田 幸伸 氏

内容: Green-Lazarsfeld によるGeneric vanishing theoremを証明し、 幾つかその応用を話そうと思います。 Xを非特異射影代数多様体でAlbanese 写像がgenerically finiteになるものとし、 Pic0 X をX上のtopological に trivialなline bundle全体とします。 すると一般のP\in Pic0 X に対して、 Hi(X,P)がi<dimX で消えるというのがGeneric vanishing theorem の主張です。 この定理とAbel多様体のFourier Mukai 変換、 Kollar による双対化層の高次順像に関する結果を組み合わせると、 irregurarityを持った多様体の双有理幾何学的な情報を得ることができます。 例えば、双有理不変量(小平次元、plurigenera 等)による Abel多様体の特徴づけを与えることができます。

近年、Calabi-Yau多様体上の層のderived categoryと、 それとmirrorの関係にある多様体のderived Fukaya category の同値が予想され、 (Homological mirror symmmetry) 以降、 代数多様体上の連接層の導来圏が盛んに研究されています。 Chen やHacon による[4]の論文はAbel多様体上の層の導来圏の理論を 古典的な代数幾何学の問題に応用したもので、 幾何学的な応用としては初めてのものです。 これは非常に興味深い結果だと思います。 Generic vanishing theoremとどう絡むかに重点をおいて話していこうと思います。

代数幾何もしくは複素幾何の基本的な知識を仮定しますが、 場合に応じて必要な定義は与えます。

参考文献

[1] Mark Green and Robert Lazarsfeld : Deformation theory , generic vanishing theorems, and some conjectures of Enriques , Catanase and Beauville . Invent.math (1987)

[2] S.Mukai : Duality between D(X) and D(X^),with application to Picard sheaves. Nagoya math.J (1981)

[3] J.Kollar : Higher direct images of dualizing sheaves I ,Ann.Math (1986)

[4] Jungkai A.Chen and Christopher D.Hacon : Characterization of abelian varieties. Invent.math (2001)


1/30 タイトル:C-representationの分類

発表者:林田 崇生 氏

内容: Kを標数0の完備離散付値体で、 剰余体が標数p>0かつ完全であるもの(たとえばQ_pの有限次拡大)とし、 Gをその絶対ガロア群、CをKの代数閉包の完備化とします。 Gが連続に作用する有限次元Q_p-ベクトル空間のことをp進(ガロア)表現といい、 大変興味ある対象ですが、今回のセミナーでは、 そのp進表現の理論の紹介という意味合いもこめてC-representation というものについて話したいと思います。 一般に、BをGが連続に作用する位相体とするとき、 Gが半線型かつ連続に作用する有限次元B-ベクトル空間のことを B-representationといいます。 この定義でB=CとしたものがC-representationで、 重要なものとしてはK上properかつsmoothなschemeの (C係数)エタールコホモロジー群などがあります。 C-representationは[2]でSenによって詳しく調べられていて、 今回はその結果の紹介です。 その他のBに関する結果としてはB_{dR}-representation (B_{dR}の定義は面倒なので省略させてください。) についてのFontaine[1]があるので、 興味を持たれた方は是非読んでみてください。(そして教えてください。)

予備知識はガロア理論と線型代数です。

参考文献:

[1] Fontaine J-M.: Arithmetique des representations galoisiennes p-adiques,Preprint.

[2] Sen S.: Continuous cohomology and p-adic Galois representations,Invent.Math.62,89-116.


1/23 タイトル:非可換局所類体論の局所的証明へ向けて

発表者:吉田 輝義 氏

内容: 今回は虚数乗法論の紹介ではなくて, 自分の研究のことを話してみます. 予備知識としては,局所類体論(局所体のAbel拡大を記述する理論) について聞いたことがあるといいかな,という程度です. うーん,でもまぁ, Galois理論を知っていれば何とか雰囲気をつかめるような話にしたいと思います.

類体論(代数体・局所体のAbel拡大を記述する理論)の非可換化は, Hilbert・高木以来の整数論学者の悲願ですが, 今やLanglandsの定式化によって,Galois群のn次元表現を 代数群GL(n)の表現に対応させるという形で研究が進んでいます. 局所Langlands対応は最近Harris−Taylorにより構成されましたが, その対応が然るべき数論幾何的なコホモロジー群への表現として 実現されていることを示そうと目指すのが 「非可換Lubin−Tate予想」(非可換局所類体の構成予想)で, Harris−Taylorの大域的な議論を高度に駆使する方法でほぼ示されているというものの, まだ純局所的な数論幾何によって示すことはできていません. 今回のセミナーでは,この「非可換Lubin−Tate予想」の 特殊な場合(tame分岐=導手1)に, Deligne−Lusztig理論の自然な帰結として純局所的な証明が 得られることを解説します(本邦初公開!)


1/16 タイトル:SerreのmodC理論

発表者:長尾 健太郎 氏

内容: SerreのmodC理論を使って球面のホモトピー群の有限性を証明します. modC理論は,本質的にはファイバー束の (コ)ホモロジースペクトル系列の応用です. (コ)ホモロジースペクトル系列を認めてしまえば, 代数的な議論によって球面のホモトピー群の有限性を証明できます. 今のところ,(コ)ホモロジースペクトル系列については 最低限必要な事実をまとめ説明し,完全な証明は与えずに用いる予定です.

予備知識はホモトピー論の基礎です.